東京高等裁判所 平成10年(行ケ)9号 判決 1999年4月27日
川崎市幸区堀川町72番地
原告
株式会社東芝
代表者代表取締役
西室泰三
訴訟代理人弁理士
竹花喜久男
同
大胡典夫
同
外川英明
同
原拓実
東京都千代田区霞が関3丁目4番3号
被告
特許庁長官 伊佐山建志
指定代理人
小松徹三
同
井上雅夫
同
平井良憲
同
小池隆
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第1 請求
特許庁が平成8年審判第8506号事件について平成9年11月28日にした審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、平成6年11月9日、名称を「X線断層撮影装置」とする発明につき、特願平2-169382号(平成2年6月27日出願)からの分割出願として、特許出願(平成6年特許願第275371号)をしたが、平成8年4月22日拒絶査定を受けたので、同年5月30日拒絶査定不服の審判を請求した。
特許庁は、この請求を同年審判第8506号事件として審理した結果、平成9年11月28日、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は、同年12月17日原告に送達された。
2 本願特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願第1発明」という。)の要旨
曝射されるX線により被検体に対して螺旋状のスキャンを行うスキャン手段と、
前記被検体の所定の範囲の透視像を表示する表示手段と、
この表示手段における透視像に基づき所望の断層像形成範囲Eを設定する設定手段と、
この設定手段で設定された範囲情報に基づき、前記断層像形成範囲Eと断層像を再構成するに必要な補正演算のための補正データ収集範囲Ecとに亘って前記螺旋状データを収集するよう前記スキャン手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするX線断層撮影装置。(別紙1参照)
3 審決の理由の要点
(1) 発明の要旨
本願第1発明の要旨は、前項記載のとおりである。
(2) 引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭62-139630号公報(甲第5号証。以下「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「本発明は、被検体の周囲をX線管及びX線検出器が対向して回転しながらX線を曝射し、走査している最中に患者ベッドを、走査面に対して垂直な方向に走査と同期して移動させることによって、高速に連続スキャンを行い、3次元画像再構成するものである。」(2頁右上欄12行~17行)、
「本発明の具体的な断層像撮影手順を第2図(別紙2第2図参照)によって説明する。まず、被検体である患者を乗せたベッドを、ガントリ開口部に挿入し、位置決め投光器などによって撮影位置決めを行う。この位置決め後、患者ベッドを撮影開始の基準となる最初の断層面からある距離aだけ手前に引きもどしておく。距離aは、面Bが曝射領域に入るまでに、患者ベッドの移動速度が一定になるだけの余裕をもつように設定しておく。
このように患者ベッドの位置決めを設定した後、スキャナを回転させ撮影を開始する。スキャナが回転し始め、一定の回転速度に達すると、患者ベッドを移動させ、面Bより手前でその移動速度が定常状態になる。被検体の曝射面が面Bを通過するのに同期してX線の曝射(基本的にX線の曝射は、パルス状でも、連続X線でも良い)を開始する。患者ベッドが、曝射開始面Bから距離bだけ過ぎた最終断層面B’まで達するとX線の曝射を停止し、患者ベッドを減速させ面A’で停止させる。すなわち、距離bは、X線曝射を行うスライス厚方向の全距離である。
患者ベッドをスキャナ走査中に移動させることは、第3図(別紙2第3図参照)に示すように静止した被検体32から見ると、X線管の軌跡31はら旋状となり、これをら旋状走査(スパイラル・スキャニング)と呼ぶことができる。第4図(別紙2第4図参照)は、被検体の体軸方向に対して垂直な曝射断面の患者ベッドの移動開始から終了までのX線管の軌跡と断層面A、B、B’、A’を鳥瞰図的に図示したものである。なお、撮影断層領域の距離bには、患者ベッドが移動する方向での補間、すなわち、スライス方向の補間演算によって投影データを求めるため、計測し始めた直後及び終了前の直前のそれぞれ1スライス分が、単に補間演算のためだけのデータとして扱われる部分が含まれることに注意する必要がある。もし、そのように距離bを設定せず、画像再構成領域として距離bを考えるならば、計測し始めた直後及び終了前の直前のそれぞれ1スライス分余分にデータを計測できるように、あらかじめ距離aを長くとっておく必要がある。
第5図(別紙2第5図参照)は、スキャナの回転速度、患者ベッドの移動速度、並びにX線曝射のタイミングと断層面A、B、B’、A’とのタイミングの関係を示したものである。スキャナの回転走査面が面Aにあるときにスキャナの回転を開始し、その回転速度が一定になってから、患者ベッドを移動させる。その移動速度が一定になったところでX線の曝射を開始する。このX線の曝射の開始が断層面Bに一致するように患者ベッドの移動速度を設定しておく必要がある。X線の曝射は、断層面B’が通過するまで続けられ、この面B’が通過後曝射を停止する。それとともに患者ベッドの移動は最初と逆の加速度を加えることにより停止させる。患者ベッドの停止後、スキャナの回転も停める。」(3頁左上欄6行~左下欄19行)
(3) 対比・判断
<1> 本願第1発明(以下、「前者」という。)と引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の補間演算は補正演算の一種であるから、後者の「画像再構成領域」、「計測し始めた直後及び終了前の直前のそれぞれ1スライス分」がそれぞれ前者の「断層像形成範囲E」、「補正データ収集範囲Ec」に相当する。
<2> また、後者には、「曝射されるX線により被検体に対して螺旋状のスキャンを行うスキャン手段」、「断層像形成範囲Eを設定する設定手段」、「断層像形成範囲Eと断層像を再構成するに必要な補正演算のための補正データ収集範囲Ecとに亘って前記螺旋状データを収集するよう前記スキャン手段を制御する制御手段」の各手段を有する旨の明確な記載はないが、スパイラルスキャンを行っていること、撮影断層領域に亘って患者ベッドの移動、X線の曝射、データの収集を自動的に行っていることからみて、当然に前記各手段を備えているものと認められる。
<3> さらに、後者において、ベッドの移動速度が一定になるだけの距離と1スライス分の距離を合わせた距離aは、操作者が設定しているものの、データを計測する(すなわち、X線を曝射する)1スライス分の距離の具体的な設定手段については明記されていない。
<4> したがって、両者は、
曝射されるX線により被検体に対して螺旋状のスキャンを行うスキャン手段と、
断層像形成範囲Eを設定するための設定手段と、
断層像形成範囲Eと断層像を再構成するに必要な補正演算のための補正データ収集範囲Ecとに亘って前記螺旋状データを収集するよう前記スキャン手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするX線断層撮影装置
の点で一致する。
<5> しかし、両者は、次の2点で相違する。
(相違点1)断層像形成範囲Eを設定するための設定手段として、前者では、「被検体の所定の範囲の透視像を表示する表示手段」を備え、この表示手段における透視像に基づいて断層像形成範囲の両端の位置を設定するのに対し、後者では、位置決め投光器などによる撮影位置決めを行うとともに、断層像形成範囲の両端間の距離bを設定している点。
(相違点2)補正データ収集範囲Ecは、前者では設定手段で設定された断層像形成範囲Eの情報に基づいて制御手段が演算して得ているのに対して、後者では、操作者が設定している点。
(4) 相違点についての判断
<1> 相違点1について
被検体の撮像位置を設定する際に、被検体の所定の範囲の透視像に基づいて設定することは、例えば拒絶査定時に引用された特開昭58-94833号公報(甲第6号証)、特開平1-293844号公報(甲第7号証)に記載されるように周知であることから、被検体の断層像形成範囲の両端の位置を設定する際に、位置決め投光器などによる位置決めと撮像断層領域の距離bの入力による設定に代えて、「被検体の所定の範囲の透視像を表示する表示手段と、この表示手段における透視像に基づ」いてその両端の位置を設定し得るよう構成することは当業者が容易に想到し得ることである(なお、透視像に基づいて位置のみならず所望の範囲の両端の位置を設定することも、例えば特開昭63-302830号公報(甲第8号証)に記載されるよう周知である。)。
<2> 相違点2について
補正データ収集範囲は、ベッドの移動速度やX線管とX線検出器の回転速度等の撮像条件に応じて決まるものであって、撮影条件に基づいて計算機等によって算出可能であるから、補正データ収集範囲を制御手段に算出させるよう構成することに、格別の困難性を有したものとは認められない。
<3> 効果について
なお、審判請求人(原告)は、審判請求の理由の中で、本願第1発明は被曝線量低減を図ることができる旨主張しているが、被曝線量が少なくなるように診断に必要な範囲のみデータを収集することは当然のことであり、このことは後者における「X線の曝射の開始が断層面Bに一致するように患者ベッドの移動速度を設定しておく必要がある。X線の曝射は、断層面B’が通過するまで続けられ、この面B’が通過後曝射を停止する。」との記載からも明らかである。してみると、両者とも断層像を形成するのに必要なデータのみを収集していることから、両者の間で被曝線量に差があるとは認められない。よって、請求人の上記主張は採用することができない。
(5) むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用例に記載されたものから当業者が容易に発明することができたものと認められ、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、この出願の請求項2に係る発明を検討するまでもなく、本件審判請求は成り立たない。
第3 審決の取消事由
審決の理由の要点(1)は認める。
同(2)(引用例)は認める。
同(3)(対比・判断)のうち、<1>は認める。<2>のうち、後者は、「曝射されるX線により被検体に対して螺旋状のスキャンを行うスキャン手段」を有することは認め、その余は争う。<3>は認める。<4>(一致点の認定)のうち、両者は、曝射されるX線により被検体に対して螺旋状のスキャンを行うスキャン手段を有することを特徴とするX線断層撮影装置の点で一致することは認め、その余は争う。<5>(相違点の認定)は認める。
同(4)(相違点についての判断)中、<1>(相違点1についての判断)のうち、被検体の撮像位置を設定する際に、被検体の所定の範囲の透視像に基づいて設定することは、例えば拒絶査定時に引用された特開昭58-94833号公報、特開平1-293844号公報に記載されるように周知であることは認め、その余は争う。<2>(相違点2についての判断)及び<3>(効果についての判断)は争う。
同(5)(むすび)は争う。
審決は、一致点の認定を誤り(取消事由1、3)、相違点についての判断を誤り(取消事由2、4)、効果についての判断を誤った(取消事由5)ため、本願第1発明の進歩性の判断を誤ったものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。
1 取消事由1(一致点の認定の誤り一その1)
審決は、両者は、「断層像形成範囲Eを設定するための設定手段」を有する点で一致する旨(甲第1号証7頁18行)認定するが、誤りである。
引用例に記載された発明は、断層像形成範囲Eを設定する設定手段を有しないものである。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)
審決の相違点1についての判断は誤りである。
(1)<1> 審決が周知の事実として引用した特開昭58-94833号公報(甲第6号証)、特開平1-293844号公報(甲第7号証)に記載された被検体の撮像位置を透視像に基づいて設定する手段は、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置に適用されたものであり、本願第1発明が対象とする螺旋状のスキャンを行うヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置ではない。
<2> ところで、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、X線による被検体のスキャン方式及び画像の再構成方法においてヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置とは根本的に異なっている。
すなわち、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、断層像を撮影する位置にベッドを移動しその位置に停止させ、停止状態においてX線管を回転しつつX線を曝射して撮影を行うものである。したがって、被検体の体軸方向における異なる位置において連続したスライスを撮影する場合、各撮像位置において1スキャン終了までは、ベッドを移動させずにX線を曝射し、1スキャン終了毎にベッドを移動して撮影を行う装置である。これに対して、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置においては、被検体を載置したベッドは被検体の体軸方向に一定速度で連続的に移動し、X線管球の回転走査はこのベッド移動期間内の所定時間においては連続的に行われる。
さらに、非ヘリカルスキャン方式においては、体軸方向におけるX線管球の回転の開始位置と終了位置とは常に一致しているのに対して、ヘリカルスキャン方式においては、X線管球の各回転における開始位置と終了位置とが被検体上で必ず体軸方向にずれるものであり、両者は、この点において著しく相違している。
したがって、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置において、被検体の体軸方向の所定位置の断層像を得るためには、所定位置におけるX線透過画像データの他に、その前後における一定範囲のX線透過画像データを必要とする。
<3> このように、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、X線による被検体のスキャン方式及び画像の再構成方法において非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置とは根本的に異なったものであり、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置において用いられていた透視像に基づく撮像位置の指定手段を、そのままヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置に適用しても必要な断層像を得ることはできない。
(2)<1> 次に、審決が周知の事実として引用した甲第6号証、甲第7号証に記載された被検体の撮像位置を透視像に基づいて設定する手段は、いずれも被検体の体軸方向の断層撮像位置を指定するものではあるが、体軸方向の撮像範囲を設定するものではないから、透視像表示装置に表示された被検体の体軸方向における所望の範囲の両端を指定し、かつ、これら両端間をX線によりスキャンする範囲として設定するような構成に関しては、全く示唆するところがない。
すなわち、甲第6号証に記載された被検体の撮像位置を透視像に基づいて設定する方法は、断層撮影部位の指定を、CRTディスプレイに表示された横線に対応付けられた番号をキーボードを介してX線断層撮像装置に入力することによって行うものであり、しかも、断層撮影部位が複数ある場合、X線断層撮影毎に、毎回断層撮影部位の指定を行うものであり、体軸方向の撮像範囲を設定するものではない。
また、甲第7号証にも、甲第6号証とほぼ同内容の技術が開示されているのみであり、本願第1発明のように、透視像表示装置に表示された被検体の体軸方向における所望の範囲の両端を指定することにより、これら両端間をX線によりスキャンするための範囲として設定するような構成に関しては全く示唆するところがない。
<2> さらに、審決は、透視像に基づいて位置のみならず所望の範囲の両端の位置を設定することも、例えば特開昭63-302830号公報(甲第8号証)に記載されているように周知である旨と認定するが、甲第8号証は、被検体の横幅及び高さをそれぞれ投影する第1及び第2の透視像を用いて、被検体の体軸方向における横幅及び高さの変化を観察することにより体軸方向に垂直な断層面における撮像範囲を適切に設定するものであるが、被検体の体軸方向の断層像の撮像領域を設定するものではない(別紙3第6図、第7図、甲第10号証参照)。第2図又は第4図(別紙3第2図、第4図)に示されている体軸方向における頭部の長さZは、被検体の体軸方向に垂直な断層面内における横幅及び高さ等の形状変化を観察するために、関心領域として頭部の範囲を示すために表示されるものにすぎない。
したがって、甲第8号証は、本願第1発明のように、透視像表示装置に表示された被検体の体軸方向における所望の範囲の両端を指定し、かつ、これら両端間をX線によりスキャンする範囲として設定するような構成については全く示唆するところがない。
(3) 以上のとおり、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置と非ヘリカルスキャン方式の同装置とは、その動作態様及び断層画像再構成の原理を全く異にしており、また、甲第6ないし第8号証に示される周知技術には、透視像表示装置に表示された被検体の体軸方向における所望の範囲の両端を指定することにより、これら両端間をX線によりスキャンするための範囲として設定する技術思想に関しては、全く示唆するところがない。
したがって、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置における被検体の撮像位置を透視像に基づいて設定する手段が周知であったとしても、かかる技術を、動作形態及び画像再構成方法を全く異にするヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置に適用することは、当業者にとって容易とはいえず、審決の相違点1についての判断は誤りである。
3 取消事由3(一致点の認定の誤り-その2)
審決は、本願第1発明と引用例に記載された発明とは、「断層像形成範囲Eと断層像を再構成するに必要な補正演算のための補正データ収集範囲Ecとに亘って前記螺旋状データを収集するよう前記スキャン手段を制御する制御手段」を有することを特徴とするX線断層撮影装置の点で一致する旨(甲第1号証7頁19行ないし8頁2行)認定するが、誤りである。
(1) 本願第1発明は、補正データ収集範囲Ecを単に計算機等によって算出可能とした点を特徴とするものではなく、「(表示手段における透視像に基づき所望の断層像形成範囲Eを設定する設定手段)で設定された範囲情報に基づき、前記断層像形成範囲Eと断層像を再構成するために必要な補正演算のための補正データ収集範囲Ecとに亘って螺旋状データを収集するように前記スキャン手段を制御する制御手段とを有すること」を特徴とするものである。
換言すれば、本願第1発明における「スキャン手段を制御する制御手段」は、前記断層像形成範囲Eに基づき、
<1> 補正データ収集範囲Ecの演算を行い、
<2> 被検体の体軸方向における(E+Ec)の範囲を設定し、
<3> 設定された範囲(E+Ec)をX線によりスキャンする
という3つの機能を実行するものである。
(2) これに対し、引用例には、<1>及び<2>の機能については、明確な記載がない。
(3) したがって、本願第1発明は、被検体の体軸方向における(E+Ec)の範囲を設定するという<2>の機能を有するのに対し、引用例に記載された発明はこれを有しないものである。審決は、<2>の機能につき何ら考慮することなく発明の容易性を判断しており、この点で一致点の認定を誤ったものである。
4 取消事由4(相違点2についての判断の誤り)
審決の相違点2についての判断は誤りである。
(1) 補正データ収集範囲Ecを算出するとは、
(a) 設定された撮像条件の中から補正データ収集範囲Ecの計算に必要なデータを選び出し、
(b) そのデータに応じて適切な計算式を選択し、
(c) 当該計算式と当該データを用いて補正データ収集範囲Ecを計算する
という一連の過程を経ることである。
すなわち、ヘリカルスキャン方式のX線CTによるX線撮像にあたっては、まず最初にX線CTを制御するためのデータとして、X線条件、再構成条件、スライス厚、スキャン時間、スキャン速度、寝台移動速度、寝台移動方向、補間方式(360度補間、180度補間)等が撮像条件として設定されるが、これらの撮像条件データのすべてが補正データ収集範囲Ecの算出に用いられるわけではない。そこで、補正データ収集範囲Ecの算出に当たっては、これら撮像条件の中から、補正データ収集範囲Ecの計算に必要となるデータを選び出すことが必要となる。
また、例えば、補間方式が360度補間の場合と、180度補間の場合では、補正データ収集範囲Ecを算定する計算式が異なってくるため、データに応じて、補正データ収集範囲Ecを算定するための適切な計算式も選択する必要がある。
そして、最後に当該計算式と当該データを用いて、補正データ収集範囲Ecを計算し、取得することができるのである。
引用例に記載された発明においては、X線CTの操作者が補正データ収集範囲Ecの算出を行う場合、上記過程のうち、(c)はもちろん、(a)及び(b)についても操作者自身が行うことになる。これに対し、本願第1発明においては、制御手段が、操作者を介在させることなく、上記(a)ないし(c)の過程すべてを行うことになる。
このように、本願第1発明は、補正データ収集範囲Ecの計算に必要となるデータの抽出、補正データ収集範囲Ecの計算に必要な計算式の選択という部分についても操作者を介在させることなく制御手段が行っているものであるところ、このような構成は、引用例には何らの示唆もなく、引用例から容易に想到できたものといえないことは明らかである。
5 取消事由5(効果についての判断の誤り)
審決は、本願第1発明の効果のうち、被曝線量の低減の点につき、「被曝線量が少なくなるように診断に必要な範囲のみデータを収集することは当然のことであり、・・・両者とも断層像を形成するのに必要なデータのみを収集していることから、両者の間で被曝線量に差があるとは認められない。」(甲第1号証10頁2行ないし12行)と判断するが、誤りである。
(1) 引用例には、X線の曝射が断層面Bで開始し、断層面B’で停止する旨記載されてはいるが、その具体的な手段に関しては、位置決め投光器を用いることを除いて全く記載されていない。特にヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置に固有な補正データ収集範囲Ecの設定についても具体的な手段が示されておらず、Ecの設定は操作者がベッドの移動機構を手動で操作していると解さざるを得ないが、これらの範囲を高精度に設定することは困難であるため、通常はそれらの設定範囲はある程度の余裕をもつて設定せざるを得ない。
これに対して、本願第1発明は、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置において、透視像表示手段を用いることにより、簡単な操作で高精度な設定を行うことができ、結果として引用例に比較して被曝線量の低減を図ることができる。
(2) さらに、本願第1発明の制御手段は、被検体の体軸方向における撮像範囲(E+Ec)を設定する機能を備えているため、ベッドの移動速度、X線管及びX線検出器の回転速度あるいは画像再構成方式等、被検体の撮影条件によって異なる補正データ収集範囲Ecの大きさを、撮影条件毎に操作者がその都度手動により計算し、設定する必要がなく、操作者及び患者の負担を著しく低減することが可能となる。また、1回の撮影に要する時間を短縮することができることから、診察効率を向上させることができる。
(3) したがって、両者の間で被曝線量に差があるとは認められないとの審決の認定は誤りであり、また、本願第1発明のその余の顕著な作用効果を看過した違法がある。
第4 審決の取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)について
ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、撮像範囲を指定するのに、その範囲の両端の位置を指定して行うのが通常である。
引用例においても、「被検体の曝射面が面Bを通過するのに同期してX線の曝射(基本的にX線の曝射はパルス状でも、連続X線でも良い)を開始する。患者ベッドが、曝射開始面Bから距離bだけ過ぎた最終断層面B’まで達するとX線の曝射を停止し、」(甲第5号証3頁左上欄19行ないし右上欄4行)と記載されており、ヘリカルスキャン方式において実質的に面BとB’により撮像範囲を特定していることが記載されているものである。
2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について
(1) 原告は、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置とヘリカルスキャン方式の同装置とでは、X線による被検体のスキャン方式及び画像の再構成方法が根本的に異なるから、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置において用いられていた透視像に基づく撮像位置の指定手段を、そのままヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置に適用しても必要な断層像を得ることはできない旨主張する。
しかしながら、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、撮像範囲を指定するのに、その範囲の両端の位置を指定して行うのが通常であることは、前記1に記載したとおりである。したがって、その位置を指定する手段としてスキャン方式や画像の再構成方法が相違するとしても、非ヘリカルスキャン方式の断層撮像装置の撮像位置の指定手段を用いることに格別の困難性はない。
さらに、非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、撮像位置での2次元画像情報を得るのみならず、「被検体の体軸方向に連続し且つ互いに平行なる複数スライス面の断層像を得る」(甲第8号証1頁右下欄8行ないし10行)ことで3次元のデータを得て、3次元画像表示を行うものであるから、3次元データを取得する体軸方向の範囲を指定する手段を有するものである。そしてこの手段は、体軸方向の範囲を指定する手段であるから、体軸方向の範囲を指定するという点において、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置における断層像形成範囲を設定する設定手段と格別相違するものではない。
よって、この非ヘリカルスキャン方式のX線断層像撮像装置における「断層像を形成する範囲を設定する設定手段」は、スキャン方式や画像の再構成方法が相違するとしても、同様に範囲の設定が必要なヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置にも適用可能なものである。
(2) 原告は、甲第6、第7号証には、透視像表示装置に表示された被検体の体軸方向における所望の範囲の両端を指定することにより、これら両端間をX線によりスキャンするための範囲として設定するような構成に関しては、全く示唆するところがない旨主張する。
しかしながら、上記(1)に記載したように、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、撮像範囲を指定するのに、その範囲の両端の位置を指定して行うのが通常である。そして、甲第6、第7号証に記載された非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置は、撮像する部位を指定する手段を有するものである。してみると、ヘリカルスキャン方式の断層撮像装置の撮像範囲の両端の位置を指定する手段として、非ヘリカルスキャン方式の断層像撮像装置の撮像位置の指定手段を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(3) 原告は、甲第8号証に記載された長さZは、被検体の体軸方向に垂直な断層面内における横幅及び高さ等の形状変化を観察するために、関心領域として頭部の範囲を示すために表示されるものにすぎない旨主張している。
しかしながら、甲第8号証には、「表示部10には、前記第1、第2のスキャノ像が表示され、オペレータは前記入力部11のトラッカボールを介してこの第1、第2のスキャノ像のそれぞれに矩形ROI(矩形状の関心領域を意味する)を設定することができるようになっており、・・・。・・・設定された矩形ROIの情報は、・・・演算手段9dに取り込まれ、・・・最大の撮影領域及び再構成領域として処理されるようになっている。そしてこの演算手段9dより・・・駆動指令手段9eに対してスライス像の撮影領域情報が送出されるようになっており、駆動指令手段9eはこの演算手段9dの演算出力に基づいて各部の動作指令信号を生成することになる。」(3頁左下欄7行~右下欄4行)、「第2図(別紙3第2図参照)において13で示すのは第1のスキャノ像上に設定された矩形ROIであり、第3図(別紙3第3図参照)において14で示すのは第2のスキャノ像上に設定された矩形ROIである。」(4頁左上欄末行~右上欄3行)との記載があり、第2図、第3図から明らかなように、オペレータは、矩形ROIとして、体軸方向の長さZを設定しているものである。
3 取消事由3(一致点の認定の誤り-その2)について
(1) 原告は、本願第1発明における「スキャン手段を制御する制御手段」は、断層像形成範囲に基づき、<1>補正データ収集範囲Ecの演算を行い、<2>被検体の体軸方向における(E+Ec)の範囲を設定し、<3>設定された範囲をX線によりスキャンするという3つの機能を実行するものであるが、審決は、上記<2>の機能については何ら考慮することなく発明の容易性を判断したものであるから、一致点の認定を誤り、進歩性の判断を誤った旨主張している。
しかしながら、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「設定手段で設定された範囲情報に基づき、前記断層像形成範囲Eと断層像を再構成するに必要な補正演算のための補正データ収集範囲Ecとに亘って前記螺旋状データを収集するよう前記スキャン手段を制御する制御手段」との記載はあるものの、制御手段が、上記3つの機能を有することは、明確に記載されていないから、原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、失当である。
(2) 仮に、「スキャン手段を制御する制御手段」が上記3つの機能を有するとしても、X線CT装置においては、通常、制御装置(コンピュータ)がスキャン動作を制御しており、引用例に記載された発明も、断層像形成範囲と補正データ収集範囲に亘りスキャンするものであるから、被検体の体軸方向における断層像形成範囲及び補正データ収集範囲からなる範囲を設定する手段を備えているものである。
したがって、審決には、この点で一致点の認定の誤りはない。
4 取消事由4(相違点2についての判断の誤り)について
原告は、本願第1発明は、(a)補正データ収集範囲Ecの計算に必要となるデータの抽出、(b)補正データ収集範囲Ecの計算に必要な計算式の選択という部分についても操作者を介在させることなく制御手段が行っており、単に(c)計算部分のみを自動化したもの以上の機能を備えている旨主張している。
しかしながら、補正データ収集範囲を算出するには、必要となるデータの抽出や計算に必要な計算式の選択の過程が必須であり、補正データ収集範囲を求めている引用例に記載されたものも、当然にそのような過程を有するものである。
してみると、制御手段がそのような過程をも行うように構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。
5 取消事由5(効果についての判断の誤り)について
(1)<1> 原告は、引用例に記載された発明では、Ecの設定は操作者がベッドの移動機構を手動で操作していると解さざるを得ないから余裕をもった範囲設定を行っている旨主張するが、引用例には、「患者ベッドをスキャナ回転面に垂直な方向のどちらへも一定速度で移動可能であり、X線の曝射と患者ベッドの移動とX線管装置の回転の同期がとれるようになっている。」(甲第5号証2頁左下欄10行~14行)との記載があり、患者ベッドの移動は一定速度でかつX線管の回転と同期していることから、患者ベッドを手動で移動させるのではなく、コンピュータ等の制御装置により制御されているものと解するのが妥当であり、手動で操作している旨の原告の主張は失当である。
<2> そして、余裕をもった範囲設定を行っているとの主張も、引用例にはその旨の記載はないし、また、余裕を持たせる格別の必要性は認められないから、この点についての原告の主張も理由がない。
<3> また、スキャン範囲が同じであれば、被曝線量も同じである。そして、スキャン範囲は、操作者が計算して設定しても制御回路が計算して設定しても、同じ結果となるから、被曝総量に格別の差はない。
(2) 引用例に記載される装置は、断層像形成範囲Eを用いて、補正データ収集範囲Ecを含む撮像範囲(E+Ec)に亘りスキャンするものであり、このスキャン範囲の設定手段としてコンピュータを用い、自動的に行うよう構成することは、当時のコンピュータ化の状況を考慮すれば、格別の困難性は認められない。そしてその作用効果である撮像範囲の正確な設定、撮影時間の短縮、撮影効率の向上、被検体の負担の軽減という作用効果は、コンピュータ化に伴う作用効果であり、格別のものではない。
理由
1 一致点、相違点の認定
本願第1発明の要旨(前記第2、2)及び引用例の記載事項の認定(審決の理由の要点(2))は、当事者間に争いがない。
そして、審決の理由の要点(3)(対比・判断)の一致点の認定のうち、両者は、曝射されるX線により被検体に対して螺旋状のスキャンを行うスキャン手段を有することを特徴とするX線断層撮影装置の点で一致すること(<4>の一部)、及び相違点の認定(<5>)は、当事者間に争いがない。
2 取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)について
(1) 前記説示の引用例の記載事項によれば、ヘリカルスキャン方式を採用する引用例に記載された装置においては、「位置決め投光器などによって撮影位置決めを行(った後)」、「スキャナが回転し始め、一定の回転速度に達すると、患者ベッドを移動させ、面Bより手前でその移動速度が定常状態になる。被検体の曝射面が面Bを通過するのに同期してX線の曝射(基本的にX線の曝射は、パルス状でも、連続X線でも良い)を開始する。患者ベッドが、曝射開始面Bから距離bだけ過ぎた最終断層面B’まで達するとX線の曝射を停止し、患者ベッドを減速させ面A’で停止させる。」(甲第5号証3頁左上欄8行ないし右上欄5行)というものであるから、引用例に記載された装置は、断層像形成範囲Eを設定するための設定手段を有しているものと認められる。
(2) したがって、本願第1発明と引用例に記載された発明とは、断層像形成範囲Eを設定するための設定手段を有している点で一致するとした審決の認定に誤りはなく、原告主張の取消事由1は理由がない(なお、審決は、両者における断層像形成範囲の具体的設定方法の相違については、相違点1の一部として認定しているものである。)。
3 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)について
(1) 透視像に基づく設定
非ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置において、被検体の撮像位置を設定する際に、被検体の所定の範囲の透視像に基づいて設定することは、甲第6、第7号証に記載されるように周知であることは、当事者間に争いがない。
このように、非ヘリカルスキャン方式における撮像位置の設定を所定の範囲の透視像に基づいて行うことが周知である以上、ヘリカルスキャン方式における断層像形成範囲の設定を所定の範囲の透視像に基づいて行うことは、当業者が容易に想到できることであると認められる。
これに反する原告の主張は、採用することができない。
(2) 両端の位置指定
<1> 原告は、ヘリカルスキャン方式と非ヘリカルスキャン方式とでは、動作形態や画像再構成方法が根本的に異なるから、非ヘリカルスキャン方式の撮像位置の指定手段をヘリカルスキャン方式に適用することは困難である旨主張するが、ヘリカルスキャン方式のX線断層撮像装置においても、X線照射部位を指定する必要があることは当然であるところ、ヘリカルスキャン方式のようにX線を連続的に螺旋状に照射するものにおいては、X線照射部位の指定が位置の指定ではなく範囲の指定とならざるを得ないことは当然である。
そして、範囲の指定をその範囲の両端の位置を指定することによって行うことは普通のことであるから、引用例に記載されたヘリカルスキャン方式の装置において、被検体の所定の範囲の透視像に基づいて被検体の撮像形成範囲を設定する際に、その両端の位置指定を行い得るように構成することは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
<2> よって、原告主張の取消事由2は理由がない。
4 取消事由3(一致点の認定の誤り-その2)について
(1) 原告は、本願第1発明は、被検体の体軸方向における(E+Ec)の範囲を設定する機能を有するのに対し、引用例に記載された発明はこれを有しないものであるが、審決は、この点で一致点の認定を誤ったものである旨主張する。
しかしながら、ヘリカルスキャン方式の引用例に、「撮影断層領域の距離bには、患者ベッドが移動する方向での補間、すなわち、スライス方向の補間演算によって投影データを求めるため、計測し始めた直後及び終了前の直前のそれぞれ1スライス分が、単に補間演算のためだけのデータとして扱われる部分が含まれる」、「画像再構成領域として距離bを考えるならば、計測し始めた直後及び終了前の直前のそれぞれ1スライス分余分にデータを計測できるようにあらかじめ距離aを長くとっておく必要がある」(甲第5号証3頁右上欄14行ないし左下欄5行)と記載されていることは、前記説示のとおりであり、これらの記載によれば、引用例には、スキャン範囲として画像再構成領域(断層像形成範囲E)を設定すると、補正データ収集範囲Ecの演算を行い、被検体の体軸方向における(E+Ec)の範囲を設定する手段が開示されていると認められる。
これに反する原告の主張は採用することができない。
(2) よって、原告主張の取消事由3は理由がない。
5 取消事由4(相違点2についての判断の誤り)について
(1) 原告は、補正データ収集範囲Ecを計算する過程のうち、(a)設定された撮像条件の中から計算に必要なデータを選び出し、(b)そのデータに応じて適切な計算式を選択する点についても制御手段が行っているという点において、本願第1発明は単に計算部分を自動化したものにとどまらない旨主張する。
しかしながら、本願第1発明においては、(a)設定された撮像条件の中から計算に必要なデータを選び出し、(b)そのデータに応じて適切な計算式を選択する点についても制御手段が行っているとしても、補正データ収集範囲を制御装置に算出させる際には、補正データ収集範囲の計算に必要なデータを用い、計算式によって算出する必要があることは当然であるから、上記(a)、(b)の点を制御手段に行わせるようにすることに、格別の困難性があるとは認められない。
(2) したがって、審決の相違点2についての判断に誤りはなく、原告主張の取消事由4は理由がない。
6 取消事由5(効果についての判断の誤り)について
(1) 原告主張の効果のうち、補正データ収集範囲Ecの設定の自動化による操作者、患者負担の低減、診察効率の向上等の効果は、コンピュータ等による演算ないし処理により達成される省力化、効率化によるものと認められ、本願第1発明のように構成することによって奏すると予測できる範囲内のものと認められる。
(2) また、原告は、本願第1発明は高精度の設定により被曝線量を低減させる効果を有する旨主張する。
しかしながら、本願第1発明により被曝線量の低減が可能であるとしても、それは、透視像を採用すること及び自動化(コンピュータ等による演算ないし処理)に伴う高精度化によるものであるから、そのような効果は、本願第1発明のように構成することによって奏すると予測できる範囲内のものと認められる。
(3) よって、原告主張の取消事由5も理由がない。
7 結論
よって、原告の本訴請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成11年4月15日)
(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)
別紙1
<省略>
別紙2
<省略>
<省略>
別紙3
<省略>